あがり症を克服するには、あがり症というSAD社会不安障害お全体像を理解することと、今できることを実践することだと思います。
あがり症という、人間に起こる困った現象の全体像を知らずに闇雲に改善策に取り組んでも、なかなか結果につながりませんし、逆に全体像だけ知っていても、日々の実践がなければこれもまた、望む結果は手にできないでしょう。
あがり症の全体像と個々の改善策を実践しなければ、あがり症のまま長い年月を過ごすことになります。
これは、人生の損出です。
僕悟史がその典型的な例です。
この本はその意味で、全体像と改善策の実践の両方を満たしている構成になっています。
《ささっと分かる「社会不安障害」あがり症の治し方》はどんな本なのかに付いて、僕なりの視点でご紹介致します。
目次
著者《木村昌幹氏》情報
1962年生まれ。
川崎医科大学卒業後、同大学附属病院心療科に勤務。
福岡県の天神で心療内科・内科・アレルギー科のクリニックを開業。
アイさくらクリニック院長。
SAD(社会不安障害)だけでなく、うつ病、不眠症、漢方治療、更年期障害等の分野も手がける。
病気が生まれるメカニズムを分かりやすく解説してくれる丁寧な説明やメール相談が評判を博し、日本全国から相談が寄せられる精神科医として活躍中。
目次・本の内容
ページ数:110p
出版日:2012年8月27日
はじめに p2
第1章 その症状「社会不安障害(SAD)かも?_
「あがり症」は治療ができる「病気」だった p10
こんな症状がある人はSADかも!? p12
社会不安障害(SAD)は「性格」や「個性」という「誤解」 p14
本人はつらい思いをしているのになかなか「病気」だと気づかれない p16
SADを抱えたまま大人になるとどうなる? p18
古くからある「対人恐怖症」とSADの関係 p20
いつも不安な「全般型」と特定場面で不安を感じる「非全般型」 p22
SADの症状その①~人前で発表するのが怖い(スピーチ恐怖) p24
SADの症状その②~人と接するのが不安(対人恐怖) p26
SADの症状その③~周囲の人の視線が怖い(視線恐怖) p28
SADの症状その④~緊張で顔が赤くなる、汗をかく(赤面恐怖・発汗恐怖) p30
SADの症状その⑤~人前で食事ができない(外食・会食恐怖) p32
SADの症状その⑥~手が震えて文字がかけない(書痙) p34
SADの症状その⑦~お茶を出すときに手が震える(振戦恐怖) p36
SADの症状その⑧~電話でのやり取りが怖い(電話恐怖) p38
SADの症状その⑨~腹鳴恐怖と排尿恐怖 p40
様々な精神弊害 学歴・就職率・結婚率の低さや離職率の高さ p44
コラム 欧米と日本「罪の文化」と「恥の文化」 p46
第2章 SADのメカニズムと治療の方法
SADになりやすい人とは? p48
病気の特徴は「人前での緊張]「身体的な反応]「回避行動」 p50
これってSAD? 似ているようで違う様々な病気 p52
日常生活に「問題」があれば治療をした方がよい p54
「頭の中が真っ白になる」のは脳の一部の血流が低下するから?! p56
SADの人は「セロトニン」量が低下している p58
「心のバランス」をとる「ドーパミン」と「ノルアドレナリン」p60
「心の状態」に関わる「GABA」と「βーエンドルフィン」 p62
治療の柱は「薬の服用」と「認知行動療法」 p64
「自信の低下」は「成功体験の積み重ね」で回復させる p66
「否定的な認知」を修正して不安を減らす「認知行動療法」 p68
SADの薬 その①~SSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬) p70
SADの薬 その②~強い不安感を減らすベンゾジアンゼピン系抗不安薬 p72
SADの薬 その③~体の反応を抑えるβブロッカー p74
気になる「薬の副作用」とその対処 p76
薬を「続けること」と「勝手にやめないこと」の大切さ p78
診察の実際~その流れを知っておこうp80
コラム 未成年者と精神科の薬 p82
第3章 日常生活の工夫で症状を軽減しよう
人間が持っている「生体リズム」とセロトニン p84
睡眠不足は「緊張状態」をつくりだしやすい p86
規則正しい生活で睡眠リズムを作っていく p88
朝の目覚めは「朝食」をしっかりと取ることから p90
午前中は「太陽光」をたっぷりと浴びる p92
「散歩」や「体操」で心身をリラックスさせる p94
脳を活性化させるための生活術 p96
「緊張する場面」で有効な「ストレッチ運動」 p98
セロトニンのもととなる「L-トリプトファン」が取れる食品 p100
SADを治せば今とは違う人生が開ける p102
ケーススタディ~治療を受けた患者さんの声~ p104
コラム SADを観てくれる医療機関を探すには p110
《ささっと分かる「社会不安障害」あがり症の治し方》はどのような本なのか?
《ささっと分かる「社会不安障害」あがり症の治し方》はあがり症というSAD社会不安障害に関する、基礎知識と具体的な治療方法を分かりやすく解説してくれています。
- SAD社会不安障害が起こる要因になるのは、そんな脳内物質の不足からくるのか?という脳機能の要素。
- どんな心理によってSAD社会不安障害が起こるのかという、人間のメンタル要因。
- 薬の服用によって、どのような作用が生まれ、SAD社会不安障害が改善されるメカニズム。
- 心理的な面から改善するためのアプローチ方法。
など、簡易な表現で分かりやすく解説されています。
脳内物質である、セロトニン・GABA・ノルアドレナリン・ドーパミン・βエンドルフィンなどの機能と影響のついての解説はわかりやすいですし、この知識はとても重要です。
悟史的にはあがり症と向き合う上で、必要な基礎知識を知るという意味でとても良い本だと思います。
SAD社会不安障害として治療するとハマる罠
木村昌幹氏はクリニックの医院長という医療機関の人なので、あがり症という人間に起こる現象を「SAD社会不安障害」という病気と捉えて治療するというスタンスです。
あがり症の改善は、医療行為として治すことができるという立ち位置で書かれています。
それは医者なので当然といえば当然ですが、このスタンスのメリットは自分が人間社会で人まえ話す、会話する、などの活動で、能力を発揮できない人間であり、そのことで自分を責めている人がいます。
自分を責めるタイプの人の場合、それが病気であると思うことで、自分があがるのは自分という人格に問題があるのではなく、病気のためである。
その病気を治せば、良いので自分を責める必要はない!
という思考に切り替わることです。
これは、あがり症改善にプラスの要素になります。
しかし、デメリットもあります。
それは、自分が「SAD社会不安障害」という病気にかかっており、あがる自分であるというアイデンティティを強化するというマイナスの効果もあります。
悟史の場合ですが、中学校になったときの人まえで緊張しまくる自分を改善したくて、本を買いその問題を解決しようと努力しました。
そして、本にあがり症、SAD社会不安障害などの改善方法を解説しているものがあり、その本を読んで初めて自分は「あがり症・SAD社会不安障害」という病気を持っている人間なんだ!というアイデンティティが自分の中で確立されてしまったのです。
それまでは、「あがり症」「SAD社会不安障害」という言葉そのものを知らなかったので、自分は緊張しやすい人間だという思いだったのです。
■緊張しやすい自分→あがり症、SAD社会不安障害の自分
というように、明らかにあがり症がステージアップしてしまったのです。
これによって、悟史はますますあがりやすくなりました。
僕のようなタイプは、木村昌幹氏のような考え方で対応すると逆にあがり症を強化してしまうのです。
《ささっと分かる「社会不安障害」あがり症の治し方》の総評
《ささっと分かる「社会不安障害」あがり症の治し方》は、この本を基礎知識として、心療内科へ通院していくことで、自分なりの理解がプラスされるので、よい本だと思います。
これに従って、実行してみてあがり症が改善されるならば大成功でしょう。
その意味で、最初に読んで実践してみるのにおすすめの本です。
そして、投薬と認知行動療法の2つを並行していくことで治療するというものなので、薬を減らしていく段階で再発していくような場合は、他の方法を模索するしかないです。
それと、悟史の経験上ですが、認知行動療法は限界があります。
効果が出る人もいますが、全く歯が立たない可能性もあります。