始めて、心療内科というものに行く機会をもった。
僕が住んでいたところの、最寄りの駅からバスで10分ほどのところにある大きな病院。
当時は心療内科というところが、どういう性質を持っているのかが全然分かっていなかった。
朝9:30に受付で、問診票に記入しそれを提出する。
自分があがり症であることを、赤の他人へ話すのは初めてだった
問診票の症状のところへ「あがり症」であがった時の状態を書き込んだときは、なんとも恥ずかしい気持になった。
知らない人が読むものに、自分の「あがり症」ということを書き込むというのは、今までにない経験だし、麻友にしかそのことを打ち明けたことがないのだ。
それも、付き合いだしてからしばらくたって、完全に心を許せる状態になったときに打ち明けた。
今回は、あったこともない人に打ち明けてしまうのだ。
とてもきれいな待合室で、1時間以上待たされてやっと、自分の名前が呼ばれる。
扉を開けてはいると、50代半ばぐらいの先生と、ナースが一人横に立っていた。
先生は問診票を見ながら、たんたんと質問をしてくる。
僕は、機械的にどの状況で何か起こるのかを答え続けた。
ひととおりの質問が終わると、先生はカンセリングをすすめてきた。
それと、絶対あがってはいけない場面が近々にあるのなら、薬を処方するという。
カウンセリングは3,000円/1回で、2回/月程度必要で、初回が1時間で2回目以降は30分。
カウンセリングor薬のどちらにするか
僕は、迷った。
カウンセリングが良いと思うが6,000円/月は学生の私にはとても高く思えた。
しかも一回30分で3,000円というのは高い気がした。
でも、薬をもらっても、根本的な解決にならない気がした。
先生曰く、薬は即効性があって効果が出やすいけど、根本的に「あがり症」が改善するわけではない。
事前にプレゼンなど、人前で話す予定が入っているならば、その1時間前くらいに飲めば、その時にあがらなくて済むのだという。
その場で「不安を抑える」「震えを抑える」効果があり、それらの症状を抑えることにより、あがりも抑制されるという効果があるというのが先生の説明だった。
その時は、近々にはそんな予定はなかった。
根本的に「あがり症」から抜け出したかった。
そのとき僕の口から出た言葉は、「薬はいらないので、カウンセリングをお願いします」だった。
その日は、そのまま診察室を出て、ナースの人にカウンセリングについてのパンフレットと手続きの手引を渡されて、今後の進めかたについて説明を受ける。
その場で1回目のカウンセリングの予約を入れた。
カウンセリングサービスのパンフレットには、今年からこのサービスが開始された旨の記載があった。
今思うと、カウンセラーを雇ったので、このサービスを使わせたかったのかもしれないと思う。
しかし、僕は不安とともに、すこし期待感も膨らんだ。
もしかしたら、これで「あがり症」の人生から抜け出せるかもしれない!
そう思うと、少しうれしかったが、同時に無駄に終わる可能性もある気がした。
それに月6,000円/月は痛い出費だった。
それと、どれだけの期間で治るかもわからなかった。
お金を払っても改善するという補償は全くないのだ。
でも可能性にかけたかった。