あがり症を克服するために必要な要素の一つに、あがり症であることは自分の人生にとってどんな問題になっているのかが、どれだけ明確になっているのか?という点があると思います。
自分の人生で、あがり症で居続けることが問題でなければ、それを克服する理由が自分の中にないので、人間の潜在意識はあがり症であるという現状を維持しようとします。
また、あがり症が問題だと認識していても、具体的にどんな問題なのかが明確になっていないと、これもまた潜在意識がその取るべき道筋を選択してくれません。
潜在意識はただ、問題だ!と言われても具体的にどんな問題なのか?が絞り込まれていないと、解決することは不可能なわけです。
あがり症であることは、、、
- 一体自分にとってどんな問題なのか?
- 具体的に何を失っているのか?
- どんな欲しいチャンスを逃しているのか?
の質問に明確な回答があることが、あがり症の改善のスタート地点に立つために必要な要素です。
著者である、松本幸夫氏はあがり症を専門に研究してきた人ではないのですが、「あがり症を7日間で克服する本」には自分が進む人生に目的や方向性があることによって、あがり症の改善・克服が現実になるというような前提が全体に流れています。
この記事では、「あがり症を7日間で克服する本」について、あがり症の改善・克服に有効なメソットが書かれているか?この本の素晴らしい点はなにか?欠点はなにか?本に書かれていることを実践して本当にあがり症が改善するのか?などについて、悟史なりの意見をご紹介致します。
目次
著者《松本幸夫》情報
・氏名:松本幸夫
・生まれ:1958年
・活動:話し方、交渉術、コミュニケーション、仕事術、段取り、タイムマネジメントをテーマにした研修・講演を年間200回近く行う。
NHK、民放各社テレビ、ラジオ出演も多数。
・著書:仕事が10倍速くなる法、あがらない話し方、中村天風に学ぶなど国内外で200冊を越える。
・趣味:格闘技試合鑑賞、韓国ドラマ、ワイン
・肩書:管理者養成学校で知られる経営者教育研究所研究員、現代ヨガの東京ヨガ道場主任研究員、コミュニケーション教育のインサイトラーニング講師、ヒューマンパワー研究所所長を経て現在ヒューマンラーニング代表
目次・内容
出版日:2003年8月29日
ページ数:206p
著者:松本 幸夫(まつもと ゆきお)
1日目 アガリ克服のための基本6ヶ条 p13
序 アガリはよいこと! p14
■好かれるヒトのタイプは?
■頭のいい人ほどアガる
■アガリ=緊張感!
1 なぜ。アガるのか? p19
■アガリを生む5つの原因
2 「アガらない」よりも「自信を持つ」 p23
■アガリに意識が集中すると・・・
■即効薬もいいけれど・・・
3 理想は「ナチュラルな状態」 p27
■アガリ克服のヒントとは?
■場所や時間も大事!
4 キーワードは「集中力」 p30
■アガリと集中力の関係
■集中力の源は?
5 「リハーサル」なしはアガる p34
■突然、指名されると・・・
6 「気分」が高揚しているとアガらない p36
■バスに酔う人/酔わない人
2日目 とっさのアガリを抑えてくれる「即効薬」を知る p39
序 「身体の状態」を整えるために p40
■心身一如とは?
1 「重心」をさげる動きをする p42
2 「上虚下実」をめざす p44
■アガリに効く5つのストレッチ
3 「呼吸」をコントロールする p50
■アガリに効く5つの呼吸法
4 「炎の呼吸法」を取り入れる p55
■やる気を高める呼吸法
5 「ジンクス」をもつ p56
■”お守り”の上手な使い方
6 「ペップトーク」の力を借りる p58
■自分を元気づける方法
7 ときには、相手の目をみないことも p60
■無理をしないことも大切!
8 体を安定させる「支え」を用意する p61
■とにかく身構えを整える
9 「視線」をそらす工夫をする p62
■何か一言添えると、より自然に!
10 「肯定的な言葉」を口にしてみる p64
■いい言葉を口癖に!
■つい考えすぎてしまう人は?
3日目 アガリ症の克服は「体調を整える」ことからはじまる p67
序 体調が悪いとアガりやすくなる p68
■いきなり心を変えるのは大変・・・
1 一ヶ月のタイムスタディをする p69
■あなたの太陽パターンは?
2 朝型か、夜型か p71
■バイオリズムの計算は重要?
■あなたのタイプは?
3 体調をコントロールしていく p74
■体調アップのカギ
4 こんな睡眠でアガリを克服する p75
■いい眠りとは?
5 睡眠の質を高める p77
■レム睡眠とノンレム睡眠
■寝つきをよくするための3つの工夫
6 最近、変化がありましたか? p81
■ストレス度チェック
7 ストレスを解消して、体調を保つ p83
■5つのちょっとユニークなストレス解消法
8 体調が悪いとこの克服法 p86
■ピンチから脱出する5つのヒント
4日目 「きちんとした準備」でアガリ症の8割は予防できる p91
序 準備不足がアガリを生む p92
■リハーサルの効果
1 「1人練習」からはじめる p93
■一人ならアガらない
■1人練習時のポイント
2 チェックリストをつくっておく p96
■チェックリストに何を書く?
■チェックリストの例
3 ミラートレーニングのすすめ p99
■鏡の前で何をする?
■ミラートレーニングの応用例
■アガリの居場所を減らす
4 心身のピークと本番を合わせる p103
■本番はいつ?
■意識的に出す5つのポイント
5 段階的なリハーサルを心がける
■リハーサルの5つのポイント
6 「クイック禅」で心を安定させる p115
■クイック禅の3つのポイント
7 「ミニシナリオ」を用意しておく p117
■あるだけでOK?
8 アガったときにすることを決めておく p119
■パニックを防ぐために
9 緊急回避まで視野に入れておく p121
■どうしようもなくなったら?
第5日目 アガリを怖がらない「強い心」を養う p123
序 強い心は日常の中でつくる p124
■完全克服に向けて
1 会議で手をあげてみる p125
2 道を尋ねてみる p127
■簡単なところから始める3つのステップ
3 ビデオ・映画から勇気をもらう p129
■あなたにとってのサクセス・ストーリーは?
4 不言実行からはじめる p131
■アガリの下地とは?
■本来の強さを引き出すには?
5 敢えてマイナスな状況を受け止めてみる p133
■はじめはアガッて当たり前!
■まずは日常の会話から
6 プレッシャーを味方にする p136
■いいプレッシャーとは?
■本番をラクにするために
7 メンタル・リハーサルを取り入れる p139
■メンタル・リハーサルの5つのポイント
■静から動へ
8 アガリを認めることも強さのうち p142
■アガリ克服までの道(レベル1~3)
■沢庵和尚が持つ強さとは?
6日目 「アガる状況別」の対処法を知っておく p147
序 アガリには大きく2つのケースがある p148
■基本を使い分ける
1 「スピーチ」でアガッてしまう p149
■5つの原因から対策を考える
2 「試合」でアガッてしまう p152
■プロボクサーに学ぶ4つのコツ
3 「会議」でアガッてしまう p155
■論理的に話す3つのコツ
4 「デート」でアガッてしまう p158
■好感を誘う3つのテクニック
5 「買い物」でアガッてしまう p162
■あなたは悪くない!
■アガリを防ぐ質問
6 「面接」でアガッてしまう p166
■プレッシャーを軽くする5つのテクニック
7 「試験」でアガッてしまう p172
■ポイントは3つ
7日目 「人生の目標」を持てば、アガらない人になれる! p177
序 人背の目標とアガリの関係 p179
■人生目標の効用
1 人生の目標って?
■願望は目標ではない!
2 目標を鮮明にする p185
■目標設定の3つのテクニック
■2つの大切なポイント
3 モシジの原則 p191
■目標を立てたら?
4 すぐにやる習慣をみにつける p193
■そのうち、そのうち、どこのうち?
■すぐにやる習慣づくりのための5つのヒント
5 小さな感動を重ねていく p202
■自分はやればできるんだ!
6 自信を深める p204
■自信を深めるための3つのヒント
「あがり症を7日間で克服する本」の独自性はどんなところ?
この本のあがり症克服メソットの構成は次になります。
あがり症克服法 | 克服するための基本6カ条 |
体調を整える | |
メンタルの強化 | |
人生の目標 | |
あがり症対処方法 | きっととした準備 |
状況別対処方法 |
あがり症を克服する方法に関するメソットを基本原則・体調・メンタル・人生という4つのアプローチについて書かれています。
また、あがってしまったときの緊急の対処方法について、準備・状況別対処方法というアプローチに分けて書かれています。
ちなみに、「7日間」であがり症を克服できるとことを期待している方がいるかも知れませんが、それは完全に裏切られます(笑)
読めば分かりますが、7間という期間で克服するというコンセプトになっていないです(笑)
松本幸夫氏はそもそも、7日間であがり症を克服できるとも、それが必要だとも思っていないのは明白です。
出版業界の流れで、本のタイトルへ具体的な期間や数値を入れると本が売れるという流れができてることから来ている、内容と完全不一致なタイトルです。
ですので、7日間で克服する本だと思って読むと全く無意味な本になりますので、純粋にあがり症を克服するための方法をこの本から見つけ出し、実践するという姿勢で読むことをおすすめします。
この本は、あがり症を克服するために必要な原則、体調、メンタル、人生という分け方で構成されており、たくさんの個々のメソットが書かれています。
例えば、あがらないようにしようとするとますますあがるので、自分が行うことそのものに集中するとあがらなくなるという話だったり、親しい友人とリラックスして会話しているときの状態を意図的に生成すればあがらない、楽しい要素にフォーカスして意識を高揚させるとあがらない、体の意識を上半身から丹田にするとあがらない、などの具体的なメソットがたくさん書かれています。
これらのメソットをたくさんやりきれれば、あがり症が確実に解消できると思います。
しかし、これら全部をやるのは大変なのと、やることそのものが難しいメソットがあるので、そこがこの本の限界でもあります。
意識を上半身から、丹田に下げて重心を下げるなどの方法は誰でもできるかもしれませんが、自分の意識を高揚させてあがらないようにするなどの方法は、自分の意識を狙って高揚させるという心理テクニックは、普通の人はなかなかできないですし、それ自体に高い意識コントロールのスキルが必要です。
この本は、一通り読んでみて、自分ができそうでかつ今の自分のあがり症の症状に有効だと思えるものから優先的に実践していくことで、望む結果につながる可能性は十分にあると思います。
素晴らしい点はなにか?
筆者の松本幸夫氏は、あがり症克服の専門家ではなく、ビジネス、成功、などのメソットを教える自己啓発系の講演家に近い方です。
そのため、あがり症のメソットについて書かれていますが、あがり症を主軸にしているというよりも、自分の人生をより良くするにはどうすればよいか?という観点が本全体に流れています。
あがり症という人間に起こる現象は、それ単体で攻略するアプローチも良いですが、松本幸夫氏のように人生をどう生きるかという視点からあがり症を捉えるというのは、小手先のテクニックであがり症を改善するというだけではなく、読者自らが新しい視点を自分で発見しそこから、あがり症という底なし沼から抜け出す光を見出すきかっけを生む姿勢だと思います。
この本の欠点は何か?
この本にかかれているメソットは、悟史から見るとNLPという心理学で全て説明できますし、その意味で有効な手法がズラッと並んでいると言えます。
しかし、個々のメソットに関する解説・取組方法のレクチャーが簡略的なため、果たしてこの本を読んで、実践して有効に活用できるか?というと、疑問が残るものも何割かあります。
そもそもページ数が足りないのです。
そうすると、あがり症改善のヒントは盛りだくさんなのですが、実際に日々実践していき確実に結果を出すという点では、本のページ数が少なすぎます。
206pしかなのですが、600pは欲しいところです。
つまり、美味しいメニューがたくさん並んでいますが、それぞれのメニューは試食しかさせてくれないというイメージなのです。
これには、必要なページ数が極端に短縮されているという、出版業界の裏事情を感じます。
この本の本当にあがり症が改善するのか?
欠点の項でお伝えしたとおり、個々のメソットの解説が少ないので、その点において実際にあがり症の改善という結果が出しづらいものもあります。
しかし、直ぐに実践できるものもたくさんあるので、まずそれを実践することで、一定の効果は確実にあると言えます。
たとえば、プレゼンなどの際にはきっちりと準備をして挑むことが、あがらない重要なポイントであると書かれていますが、このようなことは直ぐに実践できます。
きっちり準備して、リハーサルまでしてからプレゼンするのと、出たとこ勝負で行くのでは、心の余裕がぜんぜん違います。
そして、取組が難しいメソットも、それ自体はすぐ役に立たないかもしれませんが、そのアイディアは自分次第で活かすことができます。
例えば「プレッシャーを見方する」という方法が書かれていますが、これは自分がとても強いプレッシャーのかかる場面があるとします。その場面でのプレッシャーを感じるシーンを想像してみたときに、プレッシャーは自分にとって必要な要素だと思うと良いというような説明がされています。
しかし、プレッシャーが良いという考えが、本心からできるようなれるかと言ったら、難しいという人が普通です。
それは、プレッシャーが良いという考え方をしている人が周りに少ないですし、プレッシャーはキツイものなので、避けるべきものであるという考え方を、テレビ・映画・本・リアルでたくさん見てきているからです。
それを、逆の考え方をもつように変化するには、そのコツ、スキルが必要です。
ですので、直ぐには役に立ちません。
しかし、プレッシャーとは本当にマイナス要因なのか?という疑問をもつだけで、プレッシャーに対する認識が変わる可能性が出てきます。
プロスポーツ選手などは、プレッシャーが好きな人もいるのです。
あのプレッシャーのかかる場面の心地よい緊張感と興奮と高揚した気持ちが、たまらなく快感だと言う人もいるわけです。
そのような、新しい考え方、概念を取り入れる機会が今後出てきた時に、自分が変わるチャンスが生まれると思うのです。
以上、この本を今できることを真剣に取り組み続ければ、確実にあがり症は改善したり、改善するためのヒントが見えて来る可能性は高いと考えます。
総合評価
この本は、装丁やタイトルが安っぽいのですが、書かれているメソット、考え方、心理面でのテクニック、身体面でのテクニックは、その根底にある理論はかなり深いものから、創出されています。
しかし、それを実践するにはやはり、解説が丁寧だとは言い難く、簡略すぎると言わざるを得ないです。
また、やり続けることができなければ、根本にある心理的な要素にふれることなく終わることになり、望む結果も得ることができないでしょう。
「あがり症を7日間で克服する本」は、読者がそれを継続してできるような、工夫はされていません。
しかし、これから、あがり症とどう向き合っていくのか?ということについて、深い示唆を得ることができるし、たくさんのヒントが埋め込まれている著書であると思います。
その意味で、勿体ない本です。