あがり症を技術と習慣で克服する【箱田忠昭】のレビュー

あがり症を技術と習慣で克服する【箱田忠昭】のレビュー

あがり症を改善・克服するには、その人にあったステップというのがあります。

極度のあたり症の人が、聞き手を魅了し心を打つための高度な話術を学んでも全く意味がありません。

人前に出ただけであがってしまい、体は震え、声は上ずり、頭が真っ白になり、汗が吹き出し、手は震え、顔の筋肉は引きつり、体中の筋肉がせり上がって来るような感覚に襲われる、、、、

そんな人が高度な話術を学んでも、それを活用できる場面は存在しませんし、使う機会がなければそれは全く活かされません。

このようなものは、あがり症を克服するための技術と習慣にはなりえないのです。

その意味で、あがり症を改善するために、今の自分に必要なことは何か?という質問の答えを探しながら、あがり症改善に取り組む必要があります。

それがないと、あがり症である自分からは脱出することはできず、延々とあがり症という魔物と付き合う羽目になりますし、僕はそれをとことんやってきてしまいました。

「あがり症を技術と習慣で克服する」は、その点を注意する必要がある本です。

これ以降は、「あがり症を技術と習慣で克服する」を読み実践することで、本当にあがり症を克服できるのか?この本の素晴らしい点は何か?この本の欠点は何か?この本特有のオリジナルなメソット・考え方は何か?などについて、悟史の個人的な意見・感想をご紹介致します。

 

見出し著者《箱田忠昭》情報

著者《箱田忠昭》情報あがり症を技術と習慣で克服する【箱田忠昭】のレビュー
・氏名:箱田忠昭
・生まれ:1958年
・経歴:慶応大学商学部卒業、ミネソタ大学大学院修了、日本コカコーラ「広告部マネージャ」、エスティ・ローダー マーケティング部長、パルファン・イヴ・サンローラン日本支社長、1983年インサイトラーニング株式会社を設立しインサイトラーニング代表を務める。
デール・カーネギー・コースの公認インストラクターなども手がけていた。
・活動:年間300回以上のセミナーをこなすカリスマインストラクターで、超一流企業をはじめ多くのクライアントから声がかかる人気講師である。
趣味のサーフィンでは、日本最大のサーフィンクラブ「ゴッデス」の会長を務め、インストラクターでもある。
・著書:主な著書に、「できる人」の話し方&コミュニケーション術、「できる人」の時間の使い方、「できる人」の話し方&人間関係の作り方、「できる人」の仕事術&目標達成テクニック、落ちたリンゴを売れ!など多数。

 

見出し「あがり症を技術と習慣で克服する」の目次・内容

「あがり症を技術と習慣で克服する」の目次・内容
出版日:2007年4月19日
ページ数:221p
著者:箱田 忠昭(はこだ ただあき)

はじめに p1
第1章 心配ない、あがり症は必ず克服できる -自分の心がすべてを決めている! P13
1あがり「メカニズム」ーなぜ人はあがってしまうのか p14
2あがりも有益 p16
3KDDIからの脱却 p18
4人柄が大切、好かれよう p20
5時には開き直りも有効 p23
6自分から場数を踏む p28
7まずは八十点のデキを目指す p32
8あがり症と言わないこと p33

第2章 これだけ準備をすれば「あがり」は決して怖くない p37
1リハーサルを徹底しよう p38
2設定は本番と同じに p45
3イメージトレーニングも有効 p45
4想定質問のリハーサル p50
5声を見直そう p52
6手本を探すモデリング p55
7日常にもリハーサルを取り入れる p57
8日常をトレーニングの場にする p60
9十分な睡眠も大事 p64
10スマイルで余裕を示す p68
11心を落ち着かせるトレーニング p72

第3章 人前であがらない人がやっている話し方の基本テクニック p77
1楽しさを盛り込もう p78
2ポイントはアイコンタクト p82
3ワンセンテンスワンパーソンの法則 p84
4目標を持とう p88
5散弾銃式でなくライフル銃式にする p90
6筋道を立てて話すこと p92
7視覚化のメリット p101
8短文にするとアイコンタクトが楽 p105
9終わりよければ全てよし p109
10慣れないことはしない p112
11カンペを用意しておく p115
12あがっていないように振る舞うこと p117
13集中すればあがらない(一) p119
14集中すればあがらない(二) p121
15いい気分ならあがらない p127

第4章 人前であがらない人がやっている聞き手を巻き込んで引きつける上級テクニック p129
1あえて反論してみる p130
2あなたの話をすること p132
3断定すると自信が出る p135
4私は、とあえて付けてみよう p138
5共有ゾーンをつくる p142
6詳しく描写してあがりを忘れる p145
7質問すると楽になる p150
8知っている人をムリにもつくる p156
9パート・ホール法のリハーサル p158
10笑いのスキル p161

第5章 いざ、あがってしまった場合の対処方法
1体を動かすと楽になる p166
2ジャスチャー五大ルール p169
3自分を観察してみよう p175
4安全毛布も時には必要 p177
5自分の土俵に持っていく p181
6時にはあがっていると開示する p183
7あがったら何をするのかを決めておこう p185
8一人あがりはこうして対処する p196
9面接のあがりを防ぐ p200

第6章強い心を手に入れて「ドキドキ・ビクビク」とおさらばしようー今までの自分を変えよう p205
1自分にごほうびを与えよう p206
2周囲に公言してしまう p206
3成功イメージを抱く p211
4悩みの解決三大ルール p215
5常にナチュラルで p220

 

見出しこの本を実践して本当にあがり症を克服できるのか?

この本を実践して本当にあがり症を克服できるのか?
いきなりですが、「あがり症を技術と習慣で克服する」はあがり症の人向けの本ではありません。

スピーチ、プレゼンなどが苦手で良い成果が出せていない人向けに書かれた本です。

つまり、人まえであがって頭が真っ白になるような人は、この本に書かれていることは、何の役にも立たないでしょう。

あがり症の強度を次のように分けてみます。

「あがり症」4つのゾーン

《Sソーン》重度のあがり症:人前に出ると頭が真っ白になって、話をするどころではない。
《Aソーン》軽度のあがり症:人前に出るとあがってしまい、声がうわずったりしてしまうが、なんとか話すことはできる。
《Bソーン》緊張しやすい:人前に出ると緊張して、よいプレゼン・話ができない。
《Cソーン》少し緊張しやすい:人前に出るのが、得意ではないが、それなりに話はできる。

「あがり症を技術と習慣で克服する」を読んで活用できる人は、B、Cの人です。

例えば、「ワンセンテンス・ワンパースン」というテクニックがあり、それは、一つのセンテンスを話すときに聴衆の中の特定の一人だけとアイコンタクトをしてゆき、センテンスごとにニコニコしている人、頷いてくれる人など、自分が話をしていて心地がよい対象へアイコンタクトをしていくというスキルが書かれています。

確かに、講演活動をしている人や、セミナーを定期的開催している人にとっては重要なスキルですが、S、Aソーンの人はこんなスキルを使う余裕などありませんし、こんなことをやろうとしたら、ハードルが高くなるのでますますあがる要因になりえます。

別の章では、あがって失敗してもそれを気にしなくしたら、あがらなくなると説かれています。

あがり症の人は、仕事であがることで、周りに多大な迷惑をかけ続けることになりますし、そうなると仕事から外されます。

それを気にしないというのは、違う意味で問題です。

著者はあがり症とはどんなものかを知らないで、本を書いていると思えてしまいます。

著者の経歴を見れば明らかですが、あがり症を改善・克服するというジャンルではなく、ビジネスで活躍している人がもっと成功するための話術や、プレゼン力を高めるためにどうすればよいか?というゾーンで活動している人です。

あがり症とは無縁で、あがり症の人の気持ちなど全く知らない人が書いているというのが、明らかです。

結論ですが、あがり症の克服・改善にこの本は全く効果はなく、むしろ悪化させる内容になっています。

 

見出しこの本でしか得られない情報・メソットはあるか?

この本でしか得られない情報・メソットはあるか?
第2章の「これだけ準備をすれば「あがり」は決して怖くない」の中には、著者独自の、日頃からあがらないトレーニングを積み上げていく独自のメソットが紹介されています。

例えば、プレゼンの前にはリハーサルをすることを進めておりそれは、

Step1 自分一人でリハーサル
Step2 一人に聴衆役をやってもらってリハーサル
Step3 三人に聴衆役をやってもらってリハーサル

などをして準備をするというような方法が書かれています。

そして、たとえ100人の前だとしても、それぞれの人は一人なので、一人に話しかけるつもりで話せばあがりにくいという理論は、秀逸と言えます。

第5章「いざ、あがってしまった場合の対処方法」では、あがってしまったらボディーランゲージを使い、自分の体を動かすことで、あがりが消えていくというようなことが書かれています。

これは、結構有効です。

人間の心理状態は、「意識・言葉・体」の3点がセットになって生じるので、それを一つを変えると、その心理状態は強制的に変化を余儀なくされます。

S、Aゾーンの人に有効かどうかは微妙ですが、これ以外にも、この本独自の視点で考えられているメソットが複数あります。

 

見出しこの本の素晴らしい点は何か?

この本の素晴らしい点は何か?
この本は、前述の通りあがり症の人を対象に書かれた本ではなく、より成功を掴むためのプレゼン・講演のテクニックという側面が強いです。

これをそのままあがり症の人が取り組むと、確実にドツボにはまり酷いことになるのは確実だと思います。

しかし、この本に書かれている情報を、応用して自分に取り込むことができれば、あがり症改善の糸口になる要素は多分にあります。

例えば、面接を受けるときにあがる場合は、面接官を次のような人物であると、戯画化してイメージするなどのメソットが紹介されています。

○奥さんに怒られてベコベコしている
○ころんで泣いている
○トイレでふんばっている

コレ自体をやってみて、うまくいかなかったとしても、このメソットの本質を考えてみるとヒントが見えてきます。

あなたが面接官の前であがるのは、面接官という普通の人間をどのような存在として認識しているか?が大きく影響します。

もしかしたら、「自分を高い位置から審判する偉大な存在」などと認識しているかもしれません。
そんな認識をしていると、あがりやすくなります。

しかし、冷静に考えてみると、その面接官は普通の人間ですし、上司に怒られて惨めな気持ちになって落ち込んだり、中学生になった子供に反抗されてどう接してよいか分からず右往左往していたり、もしかしたら変態的な趣味を持っている変人かもしれないのです。

人間はその場面では立派ですごい人に見えますが、所詮は欠点だらけの人間なわであり、「偉大な審判者」なんて人はい存在しないということに気づくとあがりが小さくなります。

このように、個々のメソットの本質を考えていくと、あがり症改善のヒントが見つかる可能性は高いネタがこの本には鏤められています。

この著者が持っている成功哲学のエッセンスをベース書かれている本なので、そのエッセンスを嗅ぎ取れば、あがり症にも応用が効くという点が素晴らしいと言えます。

 

見出しこの本の欠点は何か?

この本の欠点は何か?
この本の欠点は、強者の理論で書かれているという点です。

あがり症で苦しんできた悟史としては、あがり症は社会の中では弱者に入ってしまうという現実があると考えています。

就活の面接で、まともに話ができなければまともな就職は困難なわけですし、その意味であがり症の人は弱者の範疇に入ると思うのです。

そして、この本には弱者として、どのようにあがり症と向き合うかと言う視点が全くないのです。

この視点のないメソットはとても空虚です。

講演、プレゼンテクニックの本をあがり症の人に売るために無理やり「あがり症」という言葉を入れて出版した本であるという点が、この本の欠点といえるでしょう。

 

見出しこの本の根底に流れる哲学は何か?

この本の根底に流れる哲学は何か?
この本の根底に流れ哲学は、第1章に書かれている「人の心が全てを決める」という考え方です。

人生はプラスの可能性に意識を向ければプラスに向かうし、マイナス面に意識を向ければマイナスに向かうという、所謂成功哲学系でよく言われている思想に基づいて書かれています。

著者自体が、世間一般で言うところの成功者といえるので、それがベースになっていると思います。

 

見出し総合評価

総合評価この本に込められてる、原液の部分には多くのヒントが埋め込まれていると思います。

しかし、ステージングが明らかに間違っています。

自己概念の次の3つのステージで言うと、「あがり症を技術と習慣で克服する」は、最低でもBのニュートラルステージの人向けです。

自己概念の3つのステージ

Aマイナスステージ 自分は価値がある<自分は価値がない
Bニュートラルステージ 自分は価値がある=自分は価値がない
Cプラスステージ 自分は価値がある>自分は価値がない

そして、極度のあがり症の人はAのマイナスステージの人が多いです。

B、C向けの内容の本をA向けのタイトルを付けたという、歪んだ本です。

あがり症の人はA→Bへと引っ越ししたいのです。

この著者が持っているノウハウを、ちゃんとあがり症の人向けに出して欲しいです。

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